あの山の向こうはどうなっているんだろう?
松原
正二さんが登山ガイドになったきっかけって?
中島
子供の頃から、谷川岳の裏側はどんな景色だろうと想像していたんだ。小学校5年生の時に初めて登ったら、後ろもずーっと山が続いてるんだとわかった(笑)。晴れていれば、遠くは富士山から北アルプスの山々まで360度の大パノラマだからね。でも、ただ登るだけじゃ本当の魅力はわからない。ガイドになって説明してあげたいと思ったんだ。
松原
正二さんの「登頂だけがゴールじゃない。過程が大事」という考え、本当にそうだなと思って。私の子育て方針にもしているんですよ(笑)。
中島
谷川岳って、僕にとって故郷の山でもあるけど、様々な魅力が詰まっている。何十年と登っていても、毎回違う感動を与えてくれるんだよ。だから、登る過程でいろんなことに気づいてもらえたらいいよね。
松原
そう! みなかみの自然の奥深さ、色、匂い、水の味、都会の自然との違いを五感で感じてほしいなぁ。
移住者が主役になれる町
中島
松原さんは、登山ガイドになるなんて思ってなかったんだよね。
松原
そうですよー。子育てしながら専業主婦していたんですから。
中島
でも、夫婦共通の趣味が「バックカントリースキー」だし、かなりのアウトドア派だよね。
松原
自然も、体を動かすことも、大好きだから。でも、正二さんに「登山ガイド、やってみない?」と誘われた時は「そんなの無理です!」って、一度は断ったんですよね。
中島
僕は、絶対向いていると思ったよ。足腰がしっかりしているし、何より人柄が明るい。
松原
正二さんに背中を押してもらって飛び込んだら、今じゃ趣味も仕事も全部、山。暇さえあれば山に登ってます。
中島
家庭も顧みず(笑)。
松原
もっと早く始めればよかった。
中島
すっかりハマッたね(笑)。意外かもしれないけど、登山ガイドって僕のような地元出身者は少なくて、ほとんどが松原さんのような移住組。でもそれって僕の願いでもある。
この大自然を気に入った人が来てくれて、結婚して子供を作って、根を下ろしてくれたら嬉しい。
松原
逆に、みなかみで生まれ育った人は、この自然が当たり前になってるかも。だって、私の子供たちも山には興味がなくて、将来は都会に出たいって(笑)。
中島
みなかみって昔から、いろんな人を受入れる土地柄なんだよ。街道に位置した温泉街だから、外から働きに来る人も多かった。
松原
今でも、他県人はもちろん外国の方も多いですもんね。多様性を受入れることで、新しい風が入って持続的に発展していく。人も、自然への愛も、循環していくのっていいですね!
「登山ガイド」 松原 美成子
(まつばら みなこ)
趣味のバックカントリースキー好きが高じて埼玉県から移住し、今や名実ともに、中島 正二さんの後継者として活躍。二児の母。
「登山ガイド」 中島 正二
(なかじま しょうじ)
谷川岳の麓で生まれ、半世紀以上にわたり登山ガイドを続ける。様々なメディアにも登場する「山岳会の名物ガイド」。