インタビュー
海外で、初めて自分を見つめ直した
男の子
…今までで、一番のチャレンジ体験は何ですか?
25歳から3年間、オーストラリアのアウトドア会社でインストラクターとして働いたことかな。
女の子
…海外で働くのって大変そう…。
海外でインストラクターとして就職するって、やっぱり簡単じゃないよ。体も大きくないし、語学力のハンデもある。中でも、一番苦労したのはマインドの切り替えだった。
日本にいると、周りの空気を読んで、なんとなーく協調していれば物事は進んでいくけど、海外じゃそうはいかない。自分の意見を主張しない人は、いないのと同じ。そうなると仕事も続けていけないし、生活すらできない。
人生で初めて、必死で自分を見つめ直して、何で勝負するかを戦略的に考えたよ。当時は、日本を含めたアジア人観光客が増えだした頃だったから、日本人インストラクターの自分がサポートすることでお客さんは安心するはずだってプレゼンして、社員にしてもらった(笑)。
失うものはないから、まずはやってみる
男の子
…稲田さん、スゴイ! どうしたらそんなに強くなれるの?
「できないと言わない」ことかな。これは、オージーの先輩にアドバイスしてもらったことなんだけどね。
日本人は謙虚だから、つい自信がない雰囲気を出してしまう。だけど、海外の人はやったことがないことでも「俺に任せろ」と自信満々。わからないことだって、引き受けてから後で調べる。それでいいんだと納得して、真似したよ。
こっちは失うものはないし、失敗したって日本に帰ればいいだけだ。そう開き直って、たとえ未経験でも「俺にやらせてほしい」と自分から仕事のチャンスを取りに行った。また、おかしいと思った時は、ぶつかることを恐れないで自分の意見を堂々と言うようにしたよ。
この時の経験が今の仕事の一つであるチームビルディングのファシリテーター(参加者を巻き込み、コミュニケーションの流れを作る役割) のベースになったと思う。
女の子
…ぶつかることを恐れないって難しいかも。
僕がチームビルディングのプログラムを通して、みんなに乗り越えてほしいことの一つがまさにそれなんだ。
初めてのメンバー同士なら、当然最初は様子見から始まるだろう。でも、声の大きなリーダー格の子に従って他の子が我慢するんじゃなくて、一時的に雰囲気が悪くなってもいいから、一人ひとり違う持ち味を出していけばいい。
ぶつかるのもエネルギーだからね。エネルギーがまっすぐ合わさるとぶつかることもあるけど、角度を変えてうまく絡めればお互いのエネルギーを生かすことができる。
誰も取り残さずに、一人ひとりが自分らしさを生かしながら、他人の良さとうまく絡み合う。そんな体感ができるメソッドだから僕は気に入っています。
家族もチーム。個性を認め合っていきたい
男の子
…何でファシリテーターになろうと思ったの?
僕の子供が小学校5年生くらいだったかなぁ。これから子供が大きくなっていく中で、昔の限られた自分の価値観で接するよりは、チームビルディングを通して多くの子供たちと接する体験が子育ての助けになるかもと思ったんだ。
ところが、現実はそんなにうまくはいかなかった。親子は距離が近いから難しいよね。でも、家族もチームだと思うとどうだろう。親だからって子供に自分の答えを押しつけられなくなる。
親はよかれと思ってつい先回りしがちだけど、実は答えはすでに子供の中にあったりする。親としての僕の役割は、子供が自分自身で答え探しをするサポート役であること。このことを意識するようにしているよ。
女の子
…私たち学生にメッセージをお願いします。
全ての人は必ず、才能を持って生まれてきます。他の人とは違う良さを、自分で気づくのはなかなか難しいことなんだけど、「才能はある」ということを自分で信じることがすごく大切だと思う。
才能に気づき、自分らしく生きることが、結局誰かへの貢献にもなって、最終的に結果にも結びつく。僕は、みんなの才能を見つけて伸ばすお手伝いができたら嬉しいと思っています。
「チームビルディング ファシリテーター」 稲田 勇人(いなだ はやと)
ミネソタ州South St.Paul高校卒業。帰国後、大学在学中に交換留学生のお世話や、海でライフセービング(人命救助活動)のボランティアとして活動。オーストラリアのアウトドア会社に就職後、帰国して日本のアウトドア会社に就職。独立後、みなかみ町でカフェレストランを経営しながら、チームビルディングプログラムに関わる。